身内より鍵屋さん

身内より鍵屋さん

実家に顔を出すと、バンが停まっていた。 誰のバンなのかは見当がついている。 実家の玄関で作業服を着て作業をしているのが、鍵屋さん。 私、「いつもスイマセン」 鍵屋さん、「いいえ、仕事ですから」 私が「いつも」と言ったのは、鍵屋さんに度々お世話になっているから。 実家に入った私、「お母さん、また、カギを失くしたの?」 母親、「そうなのよ。お父さんはスグに失くすのよ」 私、「カギを失くしたは、今年に入って何回目?」 母親、「何回だったかしら」 私、「お父さんは?」 母親、「散歩に行ってるわよ」 散歩に出掛けている父親の帰りが遅いため外を見ると、父親は鍵屋さんと話をしていた。 私、「お茶なら私が持って行くわ」 母親、「良いわよ、私が持って行く」 鍵屋さんにお茶を持って行った母親が、なかなか帰って来ないため外を見ると、両親と鍵屋さんは3人で話していた。 鍵屋さんの仕事は、うちだけではないだろうから 私、「お母さん達、鍵屋さんに迷惑よ」 すると 鍵屋さん、「良いんですよ。今日の仕事は、こちらが最後ですから」 鍵屋さんは作業を中断して、両親の話し相手になってくれる。 バンの音がして暫くすると、両親が部屋に戻って来た。 母親は、鍵屋さんが作ってくれたスペアーキーを、通帳や印鑑がしまってある引き出しに入れた。 私、「お母さん、いつも決まったところに保管をしないと、また、忘れるわよ」 母親、「何を?」 私、「何をじゃないわよ、今、カギを引き出しにしまったでしょ」 母親、「えーそうだった?」 両親は認知が進んでいるため、カギを何処にしまったかスグに忘れるのだが、鍵屋さんの連絡先だけは忘れない。

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